第2回赤十字ボランティアセッション(スフィアプロジェクト)参加レポート

2020年02月19日

昨日、第2回赤十字ボランティアセッション「スフィアプロジェクト」に出席し、「人道憲章と人道支援に関する最低基準」(スフィア基準)について学びました。


1.講師
 講師は国立病院機構災害医療センターDMAT事務局 千島佳也子氏。スフィアプロジェクトのトレーナー資格者でもあり、厚生労働省DMAT事務局スタッフとして、災害救護の現場活動や調整業務に従事されてこられたお立場から、ご講義を頂きました。


2.スフィア基準、スフィアプロジェクトとは

 講義では、スフィア基準について、1994年のルワンダ虐殺に対する国際的な支援の結果を96年に合同評価を通じて検証し、97年に始まったスフィアプロジェクトにより制定されたものであること。

スフィアプロジェクトとは、「人道支援を行う国際NGO団体と国際赤十字・赤心月運動により発足された、人道援助の主要分野全般に関する最低基準づくりのためのイニシアチブ」(出典 千島氏講義資料)のことで、「災害援助における質を向上し、支援を行い、支援を受けるさまざまな関係者に説明責任(情報共有 参加)を果たすこと目的とする」(千島氏前掲資料)と定められている旨、ご解説を頂きました。


3.スフィア基準の概要―『スフィアハンドブック』とは

 このスフィア基準は紛争や災害において国際社会ではすでに規範となっているものですが、日本で本格的にスフィア基準が導入されたのは、発災時に国際支援を受けた東日本大震災以降とのこと。この基準をまとめた文書が『スフィアハンドブック』という書籍に集積されており、その信念として定められているのが次の2点。
「1.災害や紛争の被災者には尊厳ある生活をおくる権利があり、従って、援助を受ける権利がある。
 2.災害や紛争による苦痛を軽減するために実行可能なあらゆる手段が尽くされるべきである」


まさに被災者ファーストの視点に立った理念となっておりました。『スフィアハンドブック』を開くと、人道憲章として、共通の原則や権利及び責務が規定され、難民や被災者が
「1.尊厳ある生活を送る権利
 2.人道支援を受ける権利
 3.保護と安全への権利」(千島氏前掲資料)が規定され、さらに支援者側の行動規範として定められている次の10の主原則が定められています。それは、
「1. 人道的見地からなすべきことを第一に考える。
2. 支援はそれを受ける人びとの人種、信条あるいは国籍に関係なく、またいかなる差別もなく行われる。支援の優先度はその必要性に基づいてのみ決定される。
3. 支援は、特定の政治的あるいは宗教的立場の拡大手段として利用されてはならない。
4. 私たちは、政府による外交政策の手段として行動することがないように努める。
5. 私たちは、文化と慣習を尊重する。
6. 私たちは、地域の対応能力に基づいて支援活動を行うように努める。
7. 支援活動による受益者が支援の運営に参加できるような方策を立てることが必要である。
8. 支援は、基本的ニーズを満たすと同時に、将来の災害に対する脆弱性を軽減させることにも向けられなければならない。
9. 私たちは支援の対象者となる人びとと、私たちに寄付をしていただく人びとの双方に対して説明責任を有する。
10. 私たちの行う情報提供、広報、宣伝活動において、災害等の影響を受けた人びとを、希望を失った存在ではなく、尊厳ある人間として取り扱うものとする。」(出典 『スフィアハンドブック:人道憲章と人道支援における最低基準2018』)。 


 ハンドブックではこれらの規範や行動基準に加えて、マニュアルがさらに明確化されており、紛争国や災害の現場で、難民や被災者を支援する際に、具体的にどのような視点で支援を提供するのか。避難所における被災者一人あたりのスペースから食事の量をカロリーベースで表されるなど、数値的な基準が示されておりました。


4.ボランティアセッションでの気づき

 上記の通り、いわゆる難民や被災者ファーストの視点や理念や原則・行動規範に基づく明確な数値基準もあるのですが、一つ重要なのは、たんに手厚い具体的な支援というだけでなく、難民や被災者の視点、心情に照らし、被支援者にとって望ましい支援になっているのかを問う内容であるということです。

つまり、支援をする際、ただ一方的な支援をすればよいのか。物理的な物資を提供するだけでよいのか。基準を満たせば良いのか。
支援する側が被災者の立場や尊厳に配慮しているか。ニーズに見合っているか。良かれと思った支援がかえって被災者の負担になっていないか。
支援者側がしたい支援になっていないか。
仮に支援内容が適切なものであっても、支援者の言葉が被災者を傷つけることがある。

など、支援する側の押しつけや一方的な善意が時として被支援者を傷つけ苦しめることがあるということが、学びの中で幾度と気づかされました。


5.結びに

一連のセッションは講義と受講者のグループワークを通じ、受講者自ら学び、考察する研修でした。災害救護を旨とする赤十字奉仕団としては非常に考えさせられる内容であったと思います。是非とも内部共有していきたいと思います。ご講義を頂きました千島先生と、主催を頂きました日本赤十字社東京都支部ご当局に感謝申し上げ、結びとしたく思います。(了)


                東京都隊友救護赤十字奉仕団 杉本 洋平


【参考文献】

Sphere Association, 2018 著作,JQAN 翻訳監修委員会日本語訳『スフィアハンドブック:人道憲章と人道支援における最低基準2018 』

千島佳也子氏,2020年2月17日第2回赤十字ボランティアセッション講義資料






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